保険が適用されずに高額になりやすい歯科矯正治療ですが、その治療の中にも保険が適用されるものがあると 聞きましたがそれはどんな治療なのでしょうか?

詳しく具体的に書いていきたいと思います。

健康な歯列

保険が適用される歯列矯正治療とは?

一般的には、歯科矯正治療には保険は適用されません。ですから自費による診療になり、高額な費用がかかります。ただし、矯正を必要とする症状の中には、保険を適用できるものもあります。

基本的には、「歯並びが悪い」という状態を治すことに対しては保険適用とはなりません。しかし上下の顎の大きさのバランスが非常に悪く、噛むことや発音に大きな障害がある「額変形症」といわれる症状の場合、その状態によっては顎の骨自体を調整しなければ改善できないことがあります。つまりこれは、装置を使って歯並びを治すのと違い、顎の骨の一部を外科的な手術によって切り取り、バランスをとる治療になります。これは、「骨切り術」といういかにも恐そうな名前の手術で2週間程度の入院を必要とし、保険が適用される矯正治療になります。

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この保険が適用される額変形症の主な症状としては、上顎が下顎より前に出過ぎている場合とその逆に下がり過ぎている場合、あるいは下額が上顎より前に出過ぎている場合や下がり過ぎていることが原因による出っ歯うけ口、上下の顎の前歯部分が開きすぎて前歯が噛み合わない開咬、顎の形が左右で違いすぎて噛み合わせだけでなく顔の形まで変形を伴う顎骨非対称などがあります。出っ歯やうけ口では、原因となる方の顎の骨の一部を切り取り、顎関固定用スプリントといわれる器具で適切な位置に誘導し固定します。

こういった骨切り術は、その骨の状態によって様々な方法があります。手術前に骨の状態を確認するためのX線診断やCTによる画像診断、全身的な内科的検査などを行います。麻酔を使用するため、このような全身疾患の有無や検査は大変重要なことです。また、最近では、コンピュータなどでシミュレーションを行い、最終的な骨の状態を把握するなど技術的にもさらに進歩しています。

うけ口などで下顎の骨切り術を行う場合、こういったシミュレーションなどを使って手術後の顎の状態に合わせて、顎関固定用スプリントを模型を使って作成します。このスプリントとはマウスピースのようなもので、顎の骨を切り取った後に歯の噛み合わせ部分に被せる形で装着し、目的とする顎の位置に納まっているかを確認するものです。
顎の位置が決まったらその位置で、切り離した顎の骨をプレートやネジ状のスクリューで固定します。これらの材料は、体との親和性の高いチタンが使われています。

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また、上顎に問題がある場合は同じように上顎の骨を切り取ったりずらしたりすることで調整します。場合によっては、顎を広げる装置などを併用することもあります。左右が非対称で顔貌が歪んでいる場合は、手術によってずれを修正したりすることでかなりきれいに治すことができます。

いずれにしても、保険が適用されるのは入院や手術を必要とする症例であること、そして手術だけできれいになるのではなく、加えて装置による矯正治療も継続して行う必要がある場合がほとんどであることは知っておくべきでしょう。