歯科医療の分野では、西洋医学を中心とした治療が行われるのが一般的です。
例えば、キシロカインなどの薬剤を使って麻酔をして治療を行うのも西洋医学に基づいた治療です。
このような治療の内容はもちろんですが、薬物療法で使われているメイアクトやジスロマックなどの抗生剤をはじめ、カロナールやロキソニンなどの鎮痛剤も西洋医学に基づいて開発され処方されているお薬です。
でも、時には歯科でも漢方薬が効果を発揮することがあるのです。中でも歯ぎしりに効果が期待できる漢方薬があることは意外に知られていません。歯ぎしりは癖なのに薬が効くの?と思われるのも無理はありません。
歯ぎしりを治すことはできませんが、歯ぎしりをするメカニズムに働きかける作用が期待されているといえます。
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歯科における漢方薬の適用症例
口やその周囲に関するさまざまな不調の中には、これといった原因を特定できない病気もあります。
例えば舌痛症や顎関節症などは、虫歯や歯周病と違ってこの治療をすれば治る、という治療法がはっきりしないものです。
これらの病気や症状は、ストレスなどの精神的な要因が原因して起こるともいわれています。
実は歯ぎしりは、人間が無意識に脳のストレスの解消のために行っていると言われています。このような原因がはっきりせず症状を改善するのが難しい病気に対して、漢方薬は効果を発揮するタイプの薬といえます。
それは、漢方を含む東洋医学の基本が、体の自然治癒力を高め自分自身の力で症状を改善することを目的としているからです。
歯ぎしりに効果のある漢方薬
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歯ぎしりに効果がある漢方薬として最も知られているのが
『抑肝散』
です。
もともと抑肝散は、神経の興奮を抑えストレスを軽減する効果があるとされています。
昔から子供によくみられる疳の虫(かんのむし)に効くともいわれていました。つまり精神的な作用によるさまざまな不調を改善する効果がある漢方薬なのです。
抑肝散を説明を見ると、不安症や神経症、赤ちゃんの夜泣き、更年期障害、そして歯ぎしりに効果があると、効果効能にも書かれています。
つまり、脳をリラックスさせて自律神経を落ち着かせるのに効果があるというわけです。
歯科においては、神経の高ぶりやストレスを抑える作用で子供の歯ぎしりを軽減する効果があるといわれています。
また、抑肝散の効果効能には頭痛や肩こりと記載されています。
実は歯ぎしりのある人のほとんどは、頭痛や肩こりに悩まされています。顎を動かす筋肉や関節に過剰な強い力がかかるため、血行が悪くなったりいわゆる筋肉痛のような状態を引き起こし、緊張型の頭痛や肩こりが起こるのです。
抑肝散の成分は、桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・葛根・麻黄です。そのうち、芍薬は鎮痛効果があります。
また、葛根は鎮痛効果の他に首筋の筋肉を和らげる働きを持っています。抑肝散を飲むことでこった肩や首の周囲のこりが和らげていくのです。
漢方薬の本場中国では、450年前から歯ぎしりに効果があるとして、飲まれてきた薬です。
歯科と漢方処方
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これまで歯科では、抗生剤や鎮痛剤などが処方されるのが一般的で、漢方薬を処方されることはほとんどありません。
しかし、歯ぎしりのメカニズムが少しずつ解明するにつれてその実態が明らかになってくると、漢方薬のもつ特性が治療に適していると考えられるようになりました。
もともと歯ぎしりは、脳に与えられたストレスを軽減しようとする無意識の行動だとされています。したがって、脳をリラックスさせてストレスを解消し歯ぎしりが起こりやすい脳の状態を改善してくれる漢方薬は、歯ぎしりをより根本に近い形で軽減する可能性を持った治療法と言えるでしょう。
最適な漢方薬を上手に使うことによって歯ぎしりだけでなく、歯ぎしりから起こる不快な症状を軽減することができるというわけです。