近年、日本では20代で7割、30~50代で8割、60代では9割と成人の過半数以上が歯周病に罹っているという報告があります(日本生活習慣病予防協会より)。
これが成人の8割以上が歯周病であるといわれる所以といえます。つまり、歯周病はむしろ罹患していない人を探す方が難しいと言えるほど蔓延しているのです。
「歯ブラシしても血が出ないから大丈夫」
「何でも咬めるから私には関係ない」
と思っている方はたくさんいますが、歯周病は気付かないうちにじわじわと忍び寄っているのです。
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歯周病とはどんな病気か
意外に知られていないのが「歯周病とはどんな病気なのか」ということでしょう。
歯周病は細菌の感染症です。しかも風邪やインフルエンザのように外部から侵入してきた細菌やウイルスではなく、常に口の中に存在する細菌が原因となり起こります。
虫歯の細菌とは異なる嫌気性菌(空気を嫌う菌)が歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の隙間を住み家として繁殖し、顎の骨を溶かしながらさらに深く侵入していきます。
したがって歯周病が進行するほど歯肉の奥深くまで入り込むため酸素はますます届かなくなり、嫌気性菌は勢力を増し、やがて支えを失った歯はグラグラとなり抜け落ちてしまいます。
痛みがなく時間をかけてじわじわ進行していくのが歯周病の特徴ですので、自覚症状が出る頃にはかなり進行していることが少なくありません。
また、近年の研究により歯周病菌は血管内に侵入して全身に回り血管を詰まらせるなどの影響を及ぼすことが分かっています。
糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞、感染性心内膜炎などの重篤な病気の原因ともいわれ、心臓内の血栓から歯周病菌が発見されたとの報告もあります。
ですから、いまや生活習慣病のひとつとして捉えられています。
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歯周病の目安と簡単な自己診断法を知ろう
これだけ蔓延している歯周病ですが、何をもって歯周病とするのかを知っている人は意外に少ないかもしれません。
歯周病の診断に欠かせないのは、一般的にレントゲン写真と歯周ポケットの測定、歯の動揺度の検査、顕微鏡による細菌検査などです。
レントゲン検査では、顎の骨がどの程度吸収しているか(溶けているか)を確認します。
歯周ポケットの測定は、専用の器具を挿入してポケットの深さを測ります。4ミリをボーダーラインとしてそれを超えると歯周病の域と考えます。
動揺度では歯にぐらつきがないかをチェックします。
そして近年注目されているのが細菌検査です。歯垢内にいる細菌を調べ、それに合わせた抗生剤の投与や歯磨き剤の使用など、必要に応じて内科的な治療を併用して行うことがあります。
そこでまず不安のある方に、歯周病ではないかをチェックするための自己診断法をご紹介しましょう。
症状からみる歯周病チェック
- 歯ブラシを歯茎に当てると出血する
- 最近固いものが咬みにくいと感じる
- 朝起きた時口の中がねばねばする
- 最近口臭がきつくなったと感じる、または指摘されることがある
- 前歯が出っ歯になった、または隙間が空いてきた
- 食事の際に物が詰まる
- 歯茎が下がってきた、または歯が長く見えるようになった
リスクから見る歯周病チェック
- タバコを吸っている
- 生活のリズムが不規則である
- 糖尿病に罹患している、あるいは注意を受けている
これらの項目に当てはまるものがある場合は、歯周病の可能性があります。
まずは自分のことを振り返ってみてください。
日常生活で気を付けたいこと
歯周病は、日常の小さな要因の積み重ねで悪化していきます。
それでは歯周病と診断されたら、どんなことに気を付ければいいでしょう。
- 規則正しい生活スタイルに改善する
- 時間を決めてメリハリのある食生活にし間食を控える
- 繊維質の多い野菜などをよく食べて自浄作用を促す
- 柔らかめの歯ブラシを歯周ポケットに当てて丁寧に磨く
- 歯間ブラシを使って隙間もよく磨く
- 寝る前は特に丁寧に歯磨きをして仕上げに予防効果のある洗口剤などで殺菌効果を促す
- 定期的に歯科医院を受診してチェックやメンテナンスを行う
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特に寝る前の歯磨きはとても大切です。
寝ている間は唾液の分泌が抑制されるため、細菌を洗い流してくれる機能が働きません。温かくて適度に溜まった唾液で常に湿った口の中は、細菌の培養庫のようになっています。
実は、起床時の口の中は便の10倍近い細菌がいると言われています。ですから、寝起きの口の中はねばねばして口臭も強くなるのです。
そこで、寝る前に口に中に残っている食べカスなどの細菌の餌になるものや細菌そのものを除去します。
実践してみると、朝目覚めた時の口の中の状態がすっきりしていることがわかるでしょう。
そもそも口の中は、自らの力で正常な状態にする自浄作用という機能を持っています。
しかし便利な生活の中で、小腹が空いたからコンビニへ、あるいは自販機でジュースを買って…といったことを毎日繰り返していると、自浄作用が追い付かなくなります。これが虫歯や歯周病を引き起こす一つの要因になっていることも忘れてはいけません。
また、食べるとべたべたとしてくっつきやすく柔らかい食べ物を中心とした食生活も、口の中にこびりついて残りやすいことを覚えておきましょう。
そして、最も効果的なのは定期的に歯科医院で検診を受けることです。
歯周病は一度かかってしまうと完治は難しく、一生のお付き合いになる病気です。
高血圧の方が定期的に診察を受けお薬を飲み続けるように、歯周病の方も定期的なプロのメンテナンスやチェックと毎日自分で適切な歯磨きを続けていくことが必要なのです。